あの日食べた、たらスパ(1)

この話は半ばフィクションです。たぶんに美化しまくっている箇所があります。あらかじめご了承下さい。

JR 熊谷駅に着いたのは、正午過ぎでした。都心から電車に揺られること 1 時間強。車窓に流れる風景が徐々に田舎に移り変わっていき、車内の乗客がどんどん減っていき、ほどよく車窓から風景を眺めるのに飽きてきた頃でした。
あらかじめ下調べしてあった地図を片手に、駅前の小さな商店街を抜けて住宅街に迷い込みます。お盆休みの最中だからか、それとも一日でもっとも暑い時刻だからか、周囲の住宅街にはほとんど人気が無く、ただ眩しい日差しとそれが作る陰影だけが、印象に残っています。
少し歩くと、ちんまりとした品の良い小川を見つけました。きちんとコンクリートで流れを整形され、川の両岸は遊歩道のようになっていて、ところどころにベンチまであるという優れ物です。こういうのは大好きです。
川沿いにそのまましばらく歩きます。地図ではここにあるはずなのですが、まだ見つかりません。道を間違ったのかな?と思って、きょろきょろしていると、その喫茶店が目に飛び込んできました。
そこが、馬車道鎌倉町店でした。大学生だった当時の私は、そこで運命的な出会いを果たすことになります。

つづく。