あの日食べた、たらスパ(2)

何故か連載第二回を迎えてしまいました。

ドアを開けて中に入ると、そこはとても暗い、それでいて落ち着いた雰囲気のお店でした。夏の日差しに慣れた私の目は、しばらく何も見えなかったのですが、とりあえず入ってすぐのイスに座りました。
馬車道鎌倉町店は、縦に長い構造の喫茶店でした。左にカウンター、右の小窓の側に、私が座った小さな机とイス。奧には、もう少し広いスペースがあるようです。店内には、緩やかにジャズが流れていました。古いレコードがたくさん置いてあったように思います。
やがて、水とおしぼり、メニューが運ばれてきました。他のどんな店で見たメニューとも違います。どう見ても、普通の喫茶店のメニューです。メニューをしばらく眺めて、どれでも良かったので、非常に適当に選択しました。何となくだったのです。
「ご注文は?」
「いかとたらこのスパゲッティセットで」
ちなみに、オーダーを通した女性の方は、あの制服は着ていませんでした。ここは『あの』馬車道では無いのです。

つづく。